【2026年】CannyとProductboardの違い|要望管理ツールの選び方
目次
要望管理ツールを検討すると、必ず名前が挙がるのが Canny と Productboard です。どちらも顧客の声を集めて開発の優先順位につなげるツールですが、設計思想も課金の仕組みも大きく違います。機能一覧を並べて比べても、どちらが自社に向くかは見えてきません。
この記事では、両者の違いを「何を中心に設計されているか」から整理し、料金・AI・日本語対応・向いている組織まで、判断に必要な観点をまとめます。本記事の情報は2026年8月5日時点の各社公式サイトに基づいています。料金や機能は変更されるため、契約前に必ず公式ページで最新の内容をご確認ください。
- 最大の違いは課金軸。Cannyは「フィードバックを出した顧客の数」、Productboardは「PMの人数」で課金される
- Cannyは顧客に見せるフィードバックポータルが中心、ProductboardはPMの作業環境(ロードマップ・戦略・仕様)が中心
- AIはCannyのAutopilotが全プラン無制限、ProductboardのSparkはクレジット制。使い方の想定が異なる
- 日本語は翻訳対象が逆。Cannyは投稿やchangelogの中身を自動翻訳(有料プラン)できるがUIは英語、ProductboardはポータルのUI文字列を日本語化できるが中身は自前
課金軸が違うので、比べる前に自社の形を決める
先に結論から言うと、両者は同じ「要望管理ツール」の枠で語られますが、費用のかかり方の起点がまったく違います。
Cannyは「フィードバックを寄せた顧客(tracked user)」の数で料金が決まります。顧客が増えるほど高くなり、PMが何人いても料金は変わりません。
Productboardは「maker(PM・プロダクトリード)」の人数で料金が決まります。PMが増えるほど高くなり、顧客が何人フィードバックを出しても料金は変わりません。
つまり顧客が多くPMが少ない組織はProductboard、PMが多く顧客が絞られる組織はCannyが相対的に安くなります。
この構造を理解しないまま機能比較に入ると、導入後に想定外のコストが出ます。まずは自社が「顧客が多い型」なのか「PMが多い型」なのかを確認してください。
2つのツールの立ち位置
| 観点 | Canny | Productboard |
|---|---|---|
| 設計の中心 | 顧客に見せるフィードバックポータル | PMの作業環境(ロードマップ・戦略) |
| 課金軸 | tracked user(フィードバックを出した顧客) | maker(PM・プロダクトリード) |
| 無料プラン | 25 tracked users | 1 maker・500フィードバック |
| 有料の入口 | $79/月〜(年払い) | $19/maker/月〜(年払い) |
| AI | Autopilot(全プラン無制限) | Spark(クレジット制) |
| 得意なこと | 要望の収集・投票・公開ロードマップ | 優先順位づけ・戦略設計・仕様作成 |
| 顧客向け画面の日本語 | コンテンツを自動翻訳(有料プラン・UIは英語) | UI文字列を日本語化(Labs機能・中身は自前) |

Canny:顧客の声を「集めて見せる」ことに寄せたツール
Cannyの中心にあるのは、顧客が直接アクセスできるフィードバックポータルです。顧客が要望を投稿し、他の顧客が投票し、その温度感がそのまま可視化されます。ステータス更新やChangelog(リリース告知)も標準で備わっていて、「要望を受け取ってから、対応したことを伝えるまで」が1つの場所で完結します。
無料プランでも掲示板(ボード)とフィードバックの件数は無制限で、25人分のtracked userまで使えます。小さく始めて様子を見やすい設計です。
注意したい点は、tracked userの伸び方が読みにくいことです。tracked userは「投稿・投票・コメントをした人」で、管理者が代理で登録した場合やAIが自動で拾った場合もカウントされます。公式FAQでは、BtoB SaaSなら全ユーザーの1〜5%程度が目安とされ、収集にどれだけ積極的かで変動すると補足されています。ユーザー数が数万規模のプロダクトだと、この1〜5%が数百人になることもあります。
有料プランでは支払い上限(spend limit)を設定できます。上限に達すると自動アップグレードが止まり、新規ユーザーからのフィードバック追跡が停止する挙動なので、想定外の請求を避けたい場合は導入時に設定しておくと安全です。
Productboard:PMの意思決定プロセス全体を扱うツール
Productboardは要望管理ツールというより、プロダクトマネジメントのプラットフォームです。フィードバックの集約はその入口の1つで、そこから優先順位づけ、ロードマップ作成、目標(OKR)との紐づけ、仕様書の作成までを1つの環境で行います。
カスタムの優先順位計算式は全プランで組めます。Jira や Azure DevOps との連携も全プランにありますが、連携できる数はFree/Plusが1件、Businessが5件と制限されます。依存関係の追跡はBusiness以上です。開発する機能の優先順位を決める方法で紹介したRICEのようなフレームワークを、ツール上で運用したいチームに向いています。
気をつけたいのは、機能の広さがそのまま学習コストになることです。「要望を集めて優先順位をつけたいだけ」という段階では、使わない機能のほうが多くなります。またSAML SSOがEnterpriseプランのみなど、セキュリティ要件で上位プランが必須になるケースがあります。
料金の考え方
2026年8月5日時点の公式サイト記載です。いずれも年払い前提の金額で、月払いは割高になります。
Canny
| プラン | 料金 | tracked users | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| Free | $0 | 25 | ボード・フィードバック無制限、公開ロードマップ、changelog、Autopilot AI |
| Pro | $79/月〜 | 100〜 | Jira/Linear等のPM連携、changelogメール配信、独自ドメイン、カスタムロール |
| Business | 要問合せ | 5,000〜 | Okta等のIdP連携、CRM連携(HubSpot/Salesforce)、請求書払い、ブランディング削除 |
Proは「$79/月から」で、tracked userが増えると段階的に上がります。管理者(manager)はFreeが5人、Proが10人までです。
公開ロードマップとchangelog自体は全プランに含まれます。Pro以上になるのは、changelogの購読者へのメール配信と独自ドメインです。無料プランに利用期間の制限はありません。
Productboard
| プラン | 料金 | AIクレジット | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| Free | $0 | 50/月(全体) | フィードバック500件、Contributor 25人、ポータル1つ |
| Plus | $19/maker/月 | 250/maker | 顧客セグメント、Amplitude・Mixpanel連携 |
| Business | $59/maker/月 | 500/maker | フィードバック無制限、ポータル2つ、Jira連携5件、依存関係の追跡 |
| Enterprise | 要問合せ | 1,500+800/追加maker | SAML SSO、SCIM、Salesforce連携、監査ログ |
Businessは2 maker以上、Enterpriseは5 maker以上が条件です。Businessを2 makerで使うと年払いで月額$118、年額$1,416です。月払いを選ぶと$75×2で月額$150、年額$1,800となり、年払いとの差は$384になります。
Productboardの「contributor」は、フィードバックを投稿したりコメントしたりする社内メンバーで、maker数にカウントされません。エンジニア・デザイナー・CSがフィードバックを入れる運用なら、makerはPMだけに絞れます。Free/Plus/Businessでは25人までです。
AIの設計思想が違う
両社ともAIを前面に出していますが、狙っている場所が異なります。
CannyのAutopilotは、フィードバックの「入口」を自動化します。Intercom・Zendesk・Freshdesk・Gong・Zoomなどの会話から要望を自動で拾い上げ、重複を自動で統合します。全プランで無制限に使え、料金はtracked userの増加という形で跳ね返る設計です。
要望の重複統合は運用でいちばん手間のかかる工程なので、ここが自動化される意味は大きいです。ただし自動判定の精度には限界があり、機能要望の重複統合・粒度そろえの実践Tipsで書いたとおり、課題の背景まで踏まえた判断は最終的に人が行う必要があります。
ProductboardのSparkは、PMの「作業」を代行します。フィードバックの分析に加えて、ドキュメントの生成や競合分析まで担当します。クレジット制で、公式FAQによればフィードバック100件の分析に30〜50クレジット、包括的な仕様書の作成に50〜200クレジット程度を消費します。
クレジットを使い切ってもワークスペースは通常どおり使えますが、AI機能だけが翌月まで止まります。追加購入は月払いで50クレジット$5、年払いで600クレジット$60です。
Cannyは「顧客が増えると料金に反映される」、Productboardは「AIを使うほどクレジットを消費する」という設計です。どちらも導入前に正確なコストを見積もるのが難しい部分です。
無料プランやトライアル期間中に、実際の運用ボリュームでどれだけ消費するかを測ってから判断するのが確実です。Productboardは14日間のBusinessトライアルでクレジット無制限、Cannyは無料プランのまま数ヶ月使えます。
日本語対応
日本のBtoB SaaSで使う場合に必ず確認したいポイントですが、単純な「対応・未対応」の話ではありません。両者で翻訳される対象が逆になっています。
Cannyは、日本語を含む14言語の翻訳機能を有料プランで提供しています。対象は投稿タイトル・詳細・コメントといったユーザー生成コンテンツに加え、ボード名・カテゴリ・ステータス・changelogなどチームが作成するコンテンツも含まれます。デフォルトでは無効なので、管理者が設定で有効化する必要があります。一方で、Canny自体のUI(ボタン・メニュー・ナビゲーション)は英語のままです。
Productboardは、顧客向けPortalのローカライズが全プランに含まれ、日本語も選択できます。ただしこちらは「Labs」扱いの実験的機能で、設定で有効化する必要があり、予告なく変更される可能性があると公式に明記されています。翻訳されるのはボタンや通知メールなどのシステム側の文字列のみで、カードのタイトルや説明といった中身は自分で日本語を書く必要があります。またポータル1つにつき選べる言語は1つです。
つまりCannyは「中身は翻訳されるが枠(UI)は英語」、Productboardは「枠は日本語にできるが中身は自前」。顧客が日本語で投稿し、その内容がそのまま活きるのはCanny側です。逆に、運営側が書いた日本語コンテンツを日本語UIの中で見せたいならProductboardのほうが合います。
管理側のUIは両社とも英語が基本です。社内のPM・CSが英語UIを扱えるかは、どちらを選ぶにせよ確認が必要です。
どちらを選ぶか
機能の優劣ではなく、組織の形と解きたい課題で決まります。
Cannyが向くケース
顧客からの要望を集める仕組みがまだなく、まずそこを作りたい段階に向いています。公開ロードマップや投票で顧客を巻き込みたい場合、Changelogまで一気通貫で運用したい場合も同様です。
PMは少人数で、顧客数もまだ限定的な組織であれば、コスト面でも有利です。無料プランに期間制限がないので、実際に要望が集まるかを納得いくまで試せます。
ただし翻訳機能は有料プランからで、UIは英語のままです。顧客向け画面のボタンやメニューまで日本語である必要があるかは、事前に確認しておくべき点です。
Productboardが向くケース
要望はすでに集まっていて、それを優先順位・ロードマップ・仕様に落とす工程を整えたい段階に向いています。RICEのような計算式をツール上で運用したい、Jiraと双方向に連携したい、事業目標と施策を紐づけたいといった要求があるなら、Productboardの設計思想と合致します。
PMが複数人いて、チームで同じ判断基準を共有したい組織にも向いています。
どちらも決め手に欠ける場合
「要望は集めたいが、公開ロードマップまでは要らない」「PMは1人だが顧客は多い」といった組み合わせでは、どちらも過剰または不足に感じることがあります。
その場合は、ツールを決める前に運用の形を先に固めるほうが早いです。機能要望管理とは?収集・整理・優先順位付けの基本で、収集チャネルの一本化から判断基準の明文化までの流れを解説しています。運用が固まれば、必要な機能の輪郭もはっきりします。
もうひとつの選択肢として、この記事を運営する私たちは、日本のBtoB SaaS向けの要望管理ツールアーコレ!を開発しています。散らばる要望を集めてAIが優先順位づけを支援する、日本語前提のプロダクトです。「CannyもProductboardも高機能すぎる」「英語UIを社内に展開するのが不安」と感じた方は、一度見てみてください。
よくある質問
CannyとProductboardの一番の違いは何ですか?
課金の軸が違います。Cannyはフィードバックを寄せた顧客の数(tracked user)で、Productboardは製品管理を担うPMの人数(maker)で料金が決まります。設計の中心も、Cannyが顧客に見せるフィードバックポータル、ProductboardがPMの作業環境(優先順位づけ・ロードマップ・仕様作成)と異なります。顧客が多くPMが少ない組織はProductboard、PMが多く顧客が絞られる組織はCannyが相対的に安くなります。
無料プランだけで運用できますか?
小規模であれば可能です。Cannyの無料プランはフィードバックとボードが無制限で、25人分のtracked userまで使えます。公開ロードマップとchangelogも無料プランに含まれ、利用期間の制限もありません。Productboardの無料プランはフィードバック500件、Contributor 25人、ポータル1つまでです。ただしCannyのJira連携やProductboardの顧客セグメントなど、運用を効率化する機能は有料プランからになります。まず無料で要望が集まる状態を作り、手作業が増えてきた段階で有料化を検討するのが現実的です。
日本語で使えますか?
両者で翻訳される対象が逆です。Cannyは日本語を含む14言語の翻訳機能を有料プランで提供し、投稿・コメントやボード名・changelogといったコンテンツが翻訳されますが、UI(ボタンやメニュー)は英語のままです。Productboardは顧客向けPortalのUI文字列(ボタン・通知メールなど)を日本語化できますが(Labs扱いの実験的機能)、カードのタイトルや説明といった中身は自分で日本語を書く必要があります。管理画面は両社とも英語が基本です。顧客の投稿を活かしたいならCanny、運営が書いた日本語コンテンツを日本語UIで見せたいならProductboard、というのが使い分けの目安です。
料金以外で見落としやすい比較点はありますか?
SSOの粒度です。Cannyは顧客向けのSSO(ウィジェットSSO・SSOリダイレクト)が全プランで使える一方、Okta・Entra ID・OneLogin・OIDCといった社内メンバー向けのIdP連携はBusinessプランです。ProductboardのSAML SSOはEnterpriseプランのみで、情報システム部門がSSO必須と定めている企業では想定より上位のプランが必要になります。またProductboardはJira連携の数がプランで制限され、Free/Plusは1件、Businessは5件までです。複数プロジェクトを扱う場合は事前に確認が必要です。
まとめ
CannyとProductboardは、同じ「要望管理ツール」として並べられがちですが、解いている課題が違います。Cannyは顧客の声を集めて見せる仕組み、Productboardは集まった声を意思決定に変える環境です。
そして料金は、Cannyが顧客数、Productboardがチーム人数で膨らみます。この構造を理解せずに機能表だけで比較すると、導入後にコストが想定と乖離します。
日本のBtoB SaaSでは、日本語対応の中身も確認が必要です。Cannyは投稿やchangelogの中身を日本語含む14言語に自動翻訳できますが(有料プラン)UIは英語のまま、Productboardは逆にUI文字列を日本語化できますが中身は自前です。「顧客向け画面のどこまでが日本語である必要があるか」を先に決めておくと、どちらが合うか判断しやすくなります。
選ぶ順番としては、まず自社が「集める仕組みがない」段階なのか「集まった声を捌けていない」段階なのかを見極めること。次に日本語要件を確認すること。そのうえで無料プランやトライアルで実際の運用ボリュームを測り、コストの伸び方を見てから決める。遠回りに見えますが、この順番がいちばん確実です。
本記事の情報について:料金・機能は2026年8月5日時点のCanny公式料金ページ、Cannyヘルプセンター(翻訳機能はLanguage Translations)、Productboard公式料金ページ、Productboardサポートの記載に基づきます。両社とも機能追加や料金改定を頻繁に行っているため、契約前に必ず公式ページで最新情報をご確認ください。