RICEとICEの違い・使い分け
目次
RICEとICEは、どちらも施策の優先順位を考えるための手法です。選ぶときは「どちらが高性能か」より、影響を受ける対象数を見積もれるか、どの程度の詳しさで比べたいかを確認します。
RICEは対象数と総工数を分けて扱います。ICEは影響・確信度・容易さを採点して、候補を比較します。名前は似ていますが、RICEがICEにReachを足しただけ、という理解では計算を間違えます。Eの意味と採点尺度も違うためです。
- Reachを同じ期間・単位で見積もれるなら、RICEで対象数と工数を明示できる
- ICEは採点基準をそろえて使う。平均式と積式を同じ表に混ぜない
- Easeは高いほど容易、Effortは大きいほど工数がかかる。スコアの数値は手法をまたいで比べない
候補の整理から着手判断までの全体像は、開発する機能の優先順位を決める方法で紹介しています。
評価する項目と計算方法を比べる
RICEは Reach × Impact × Confidence ÷ Effort で計算します。顧客対応ソフトウェア企業Intercomが公開した手法で、一定期間の対象数と、対象1人への影響を分けて見積もります。
ICEはImpact・Confidence・Easeの3項目を使います。本記事では、各項目を1〜10で評価し、(Impact + Confidence + Ease) ÷ 3 で求める平均式を採用します。GrowthHackers公式の実践記事では平均を使い、Productboardの解説でも1〜10の平均式を紹介しています。
| 比較する点 | RICE | ICE(本記事の平均式) |
|---|---|---|
| 対象数 | Reachとして別に見積もる | 独立した入力項目はない |
| Impact | 対象1人への影響。原典は0.25・0.5・1・2・3 | 目標への影響を1〜10で採点 |
| Confidence | 推定への確信度。80%なら0.8で計算 | 根拠の強さを1〜10で採点 |
| Eの意味 | Effort。チーム全体の工数を分母に置く | Ease。容易なほど高く採点する |
| 比較前の準備 | 期間・対象の単位・工数をそろえる | 3項目それぞれの採点基準をそろえる |
ICEには Impact × Confidence × Ease という積式の説明もあり、ProductPlanはこの積式を紹介しています。平均と積では順位が変わる場合があるため、どちらを使うかを表の上部に書き、途中で混ぜないでください。
EaseとEffortは数字の向きが逆
RICEのEffortは作業量です。ほかの条件が同じなら、工数が増えるほどスコアは下がります。ICEのEaseは容易さなので、簡単に実行できるほど高く採点します。大変な案にEaseの10点を付けると、意図と逆の順位になります。
Easeを1〜10で採点する場合は、1を最も難しい側、10を最も容易な側として基準をそろえます。工数だけを見るのか、必要な人員や外部依存も含めるのかを決めてください。人月の数値をそのままEase欄へ写すことはできません。
同じく、RICEのImpactの2とICEのImpactの8は、異なる尺度です。ICEのImpactに対象の広さも含めて評価するなら、その考え方を明記します。Reachの列がないからといって、影響を受ける人の数を一切考えない手法ではありません。
同じ3つの候補を両方で採点する
ここからは月次集計ツールの架空例です。期間は次の四半期、目標は集計作業の手間を減らすこととします。施策・顧客数・工数・採点は説明用の仮定で、アーコレや株式会社Covvyの実績ではありません。
RICEで対象社数と工数を分ける
この例では、Reachを対象社数、Impactを1社への影響として扱います。対象の単位を変える運用なので、全候補を同じ社数でそろえます。
| 候補 | Reach | Impact | Confidence | Effort(人月) | RICE |
|---|---|---|---|---|---|
| 集計条件の保存 | 40 | 1 | 80% | 1 | 32 |
| 入力漏れの通知 | 20 | 2 | 80% | 1.5 | 約21.3 |
| CSV出力の改善 | 30 | 1 | 50% | 0.5 | 30 |
保存は 40×1×0.8÷1=32、通知は 20×2×0.8÷1.5=21.333…、CSVは 30×1×0.5÷0.5=30 です。この条件では、保存、CSV、通知の順になります。
ICEでは採点基準を置き直す
同じ情報を使って、目標全体への影響、根拠の強さ、容易さを1〜10で再評価します。この例のImpactは、対象の広さと1社への効果を合わせて判断します。保存と通知は全体への影響が同程度と考えて8、CSVはそれより小さいとして6と仮定します。
Confidenceは保存・通知を8、効果の確認が薄いCSVを5とします。Easeは、総工数と依存関係を見て保存を6、通知を4、比較的小さいCSVを9とします。これらは本記事の仮の採点で、人月からの共通換算表ではありません。
| 候補 | Impact | Confidence | Ease | ICEの平均 |
|---|---|---|---|---|
| 集計条件の保存 | 8 | 8 | 6 | 約7.3 |
| 入力漏れの通知 | 8 | 8 | 4 | 約6.7 |
| CSV出力の改善 | 6 | 5 | 9 | 約6.7 |
保存は (8+8+6)÷3=7.333…、通知は (8+8+4)÷3=6.666…、CSVは (6+5+9)÷3=6.666… です。通知とCSVは丸める前から同点です。
ここでは両方とも保存が最上位ですが、RICEでは差が付いた通知とCSVがICEでは同点になりました。平均式では、CSVの低めのConfidenceを高いEaseが補っています。根拠の弱い候補が上位に残ったら、着手前に追加確認が必要です。
RICEの32とICEの約7.3を比べて、片方の価値が大きいとは判断できません。比べられるのは、それぞれの手法・条件の中での順位と、その理由です。例のConfidenceも、80%を常に8点へ換算する規則ではありません。

Reachの見積もりから使い分ける
対象の広さが候補ごとに違い、利用記録などから同じ期間の対象数を見積もれるなら、RICEを使う理由があります。「少数への大きな効果」と「広い範囲への小さな効果」を、分けて説明できるためです。
候補を短時間で整理したいときや、対象数を独立した数値として置くことが難しい段階では、ICEから始める選択肢があります。ただし、Reachを省けば根拠不足が解消するわけではありません。Impactを判断する材料もない案は、採点より先に課題や対象を確認します。
迷うなら、最初に同じ3件程度を採点してみます。対象数の違いが判断を左右するならRICE、3項目の根拠と採点基準で十分に候補を絞れるならICEを使う、という選び方です。良い点が出る方法へ後から切り替えるのは避けてください。
よくある質問
ICEで絞ってからRICEを使ってもよいですか?
可能です。候補を絞ったあと、期間・対象・Impactの尺度・総工数をそろえて再評価します。ICEの点数をRICEの欄へそのまま転記したり、両方の点数を足したりはしません。
RICEのほうが客観的で正確ですか?
入力項目が増えても、推定の根拠が増えるとは限りません。対象数が仮置きなら、その不確かさも残ります。値を変えた際の順位の確認は、RICEスコアの使い方と限界で扱っています。
まとめ
RICEは対象数と総工数を分け、ICEは影響・確信度・容易さを採点して比べます。Reachを見積もれるか、採点の根拠をそろえられるかを確かめて選んでください。式の違いとEの向きを共有し、最後は依存関係や実装範囲も確認して判断します。
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