顧客とユーザーの違いとは?
目次
顧客とユーザーは、重なることもありますが、いつも同じ相手を指すわけではありません。BtoBサービスでは、契約する会社、購入を決める人、毎日使う人を分けて考えると、「誰に何を聞くか」を整理しやすくなります。
「顧客から評判がいい」と聞いても、導入を決めた責任者の話なのか、実際に操作する人の話なのかで、分かることは違います。役割を分ける目的は、相手を細かく分類することではなく、声の背景を取り違えないことです。
- 顧客企業と、購入・管理・利用を担う人の役割を区別します。
- 一人が複数の役割を持つ場合は、どの経験を話しているか確かめます。
- 役職名だけで判断せず、発言した場面と情報の経路を残します。
まず、言葉を使う範囲をそろえる
「顧客」は、サービスを購入・契約する相手を指して使われることが多い言葉です。企業向けのサービスなら、会社や組織を単位に「顧客」と呼ぶ場合があります。「ユーザー」は、サービスや製品を使う人を指して使われます。
ただし、これはあらゆる会社や場面に共通する厳密な区分ではありません。契約前の相手を「見込み顧客」と呼んだり、利用している人をまとめて「お客様」と呼んだりもします。この記事では、BtoBの顧客の声を扱うための整理として、次のように分けます。
| 言葉 | この記事で確認すること |
|---|---|
| 顧客企業 | どの会社・組織との契約や取引に関わる話か |
| 購入・継続を決める人 | 導入や契約の継続を、どんな条件で判断するか |
| 管理する人 | アカウントや設定、社内での使い方をどう管理するか |
| ユーザー・利用者 | どの業務で、実際に何を操作するか |
一人が複数の役割を担う場合もあります。また、管理する人も、管理画面を使うユーザーです。「顧客かユーザーか」の二択にするのではなく、いまの発言がどの役割の経験なのかを確かめます。
同じ会社でも、見えている困りごとは違う
ここからは、架空の経費精算サービスを使う会社の例です。実在する企業やアーコレ!の利用事例ではありません。
この会社では、管理部門の責任者が契約の継続を判断し、経理担当者が設定と集計を行い、営業担当者が外出先から経費を申請しているとします。
| 役割 | 例えば、こんなことを確かめる |
|---|---|
| 管理部門の責任者 | 継続を判断するために、何の情報が必要か |
| 経理担当者 | 月末の確認や差し戻しを、どのように進めているか |
| 営業担当者 | 外出先から申請するとき、どの操作で困るか |
責任者が「集計結果を確認しやすい」と話していても、営業担当者が迷わず申請できているかは別の問いです。反対に、営業担当者が「使いやすい」と答えても、会社が契約を続けられる条件まで分かったとは言えません。
どちらかの声を優先して正解にするのではなく、それぞれが知っていることを聞きます。英国政府のGOV.UKの利用者ニーズの調査ガイドも、実際の利用者だけでなく、サービスを提供する人や利用者を支援する人のニーズを考慮するよう示しています。民間の業務サービスでも、画面を操作する人の周りにいる役割を見落とさないための参考になります。

「誰が言ったか」と「何を経験したか」を一緒に残す
役職名が分かっても、それだけで発言の意味が決まるわけではありません。責任者自身が毎日申請することもあります。営業担当者が、同僚から聞いた話を伝える場合もあります。
たとえば「スマホで申請しにくい」という声なら、本人が操作して困ったのか、他の人から相談を受けたのかを確かめます。人づての情報も大切な手がかりですが、直接の経験と区別しておくと、次に誰へ聞けばよいかが分かります。
この架空例では、次のような記録が考えられます。
| 残す項目 | 記入例 |
|---|---|
| 顧客企業の識別 | 社内の顧客ID |
| 発言した人の役割 | 経費を申請する営業担当者 |
| 利用した場面 | 出張先で領収書を添付して申請した |
| 声の内容 | 添付できたか分からず、同じ操作を繰り返した |
| 情報の経路 | 本人から聞いた経験。実際の画面は未確認 |
| 次に確かめたいこと | 添付後に何が表示され、どう判断したか |
相手の氏名や細かな個人情報を、すべての資料へ書く必要はありません。社内の識別情報と業務上の役割を使い、読む人に必要な範囲で記録します。
調査で誰に参加してもらうかを決める段階では、顧客ニーズ調査の対象者の選び方で、役割と経験を募集条件へ落とし込めます。
人数と会社数も、同じものとして数えない
一つの会社で5人が同じ問題を伝えた場合と、5社から1人ずつ伝えた場合は、どちらも5人の声です。しかし、影響を確認できた会社数は異なります。
この違いだけで、どちらの要望が重要かは決まりません。同じ会社でも、別々の業務に影響しているかもしれませんし、複数社の声でも条件は違うかもしれません。まず、会社数、人数、届いた連絡の件数を分けておくと、後の比較で意味を取り違えにくくなります。
「ユーザー数」という数字も、登録アカウント数なのか、対象期間に実際に使った人数なのかを確認してください。同じ名称でも、集計の定義が違えばそのまま比較できません。
最初の一歩は、手元の声に役割を一つ添えること
最初から詳しい人物像を作る必要はありません。手元の要望を一つ選び、次の3点を確認してみましょう。
- どの会社・組織の話でしょうか。
- 発言した人は、どの立場で何をしていましたか。
- その人自身が経験したことと、まだ分からないことは何でしょうか。
分からない欄は、役職から推測せず「未確認」と残します。営業やCSが受け取った声を開発へ渡す場合は、顧客要望の引き継ぎ方も参考になります。
こうして集めた声を、整理・判断・回答へつなげる全体像は、機能要望管理の基本で説明しています。
まとめ
顧客とユーザーは、言葉の使い方だけでなく、購入・管理・利用のどの役割を指しているかが大切です。一人が役割を兼ねることもあるため、二択で分けず、発言した場面と経験を確かめます。まず手元の要望一つに、誰のどんな作業の話かを添えるところから始めましょう。