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NPSを製品改善に活かす方法|点数を追う前に理由を読む

公開 2026-10-06更新 2026-10-06読了 約7分執筆:アーコレ運営|株式会社Covvy CEO 古沢
NPSを製品改善に活かす方法|点数を追う前に理由を読む
目次

NPSが前回より上がったとき、製品の何が良くなったのかまで説明できるでしょうか。点数だけでは、どの機能が評価されたのか、どんな不満が残っているのかは分かりません。さらに、点数を上げること自体が目的になると、聞き方や回答者の選び方を変えて数字を整える動機が生まれます。

この記事では、NPSを製品改善につなげるために、点数の理由をどう読み、次の確認につなげるかを整理します。拾った声を開発計画に反映する手順はプロダクトロードマップの作り方で扱っています。

この記事の要点
  • 点数を上げること自体が目的になると、測り方が歪むおそれがあります
  • 回答が少ないときは、点数の上下と一緒に回答者と理由を確認します
  • 自由記述を日常の声と同じ場所で読み、追加で聞くことを決めます

NPSは回答者の分類から計算する

NPS(Net Promoter Score)は、Fred Reichheldが2003年にHarvard Business Reviewの記事で提唱した指標です。スコアのもとになる設問は、「この会社を友人や同僚にすすめる可能性は、0〜10のどのくらいですか」です。

回答は3つに分けられます。

区分回答扱い
推奨者(Promoter)9〜10全回答者に占める割合を足す
中立者(Passive)7〜8全回答者の人数(分母)に含む
批判者(Detractor)0〜6全回答者に占める割合を引く

スコアは全回答者に占める推奨者の割合から、批判者の割合を引いた値です。Bainの公式定義に沿って、人数から書くと「(推奨者数 − 批判者数)÷ 全回答者数 × 100」で計算できます。たとえば100人が答えて推奨者が40人、中立者が40人、批判者が20人なら、NPSは20です。

中立者は、推奨者・批判者の割合を求める分母に含めます。ただし、NPSだけでは各区分の人数や個々の回答点までは分かりません。たとえば推奨者50人・中立者20人・批判者30人でもNPSは20になり、同じスコアでも回答の内訳は異なります。

点数の達成だけを評価すると、測り方が歪む

NPSの点数を上げること自体が目的になると、指標としての信頼性を損なうおそれがあります。製品を直さずに、回答を誘導したり、調査対象を選別したりしても点数は上げられるからです。

提唱者のReichheldらも、2021年の「Net Promoter 3.0」で、自己申告のスコアとフレームワークの誤解がNPSの信頼性を損なったと指摘しました。企業や社員による誤用として、次の例を挙げています。

  • 現場の社員のボーナスをスコアに連動させます。その結果、社員は顧客へのよりよい対応を学ぶことより、自分のスコアを気にするようになります
  • 社員が顧客に「10点をつけてもらえないと仕事を失う」と頼み込みます
  • 「10点をつけてくれたらオイル交換を無料にする」と見返りを示します
  • 請求を却下した顧客には、そもそもアンケートを送りません
スコアは、製品を良くしなくても上げられます

上の4つはどれも、製品が良くなっていないのにスコアだけが上がる方法です。点数を目標に置けば、こうした手段に頼る動機が生まれます。

Reichheldらは、一部の企業がNPSを「虚栄の指標」に変えてしまったと書き、対策として、アンケートではなく会計データに基づく指標を併せて見ることを提案しています。

社内で「今期はNPSを5ポイント上げる」と決める場合も、点数だけで達成を評価しないほうがよいでしょう。調査条件をそろえたうえで、どんな不満に対応したか、顧客が改善を実感しているかまで確認しなければ、製品が良くなったとは判断できません。

NPSだけで成長を予測しない

NPSだけで事業の成長を予測できるとは限りません。顧客の回答を定点で把握する材料として使い、売上や継続利用の変化とは分けて確認します。

KeininghamらがJournal of Marketing(2007年)で発表した研究では、ノルウェーの21社・15,500件を超える顧客インタビューのデータを用い、Reichheldらの結果を米国顧客満足度指数(ACSI)とも比較しています。その分析では、NPSが他の指標に対して持つとされた「明確な優位性」は再現できませんでした。

これは、研究対象の企業・業種でNPSの優位性を確認できなかったという結果です。あらゆる企業でNPSと成長に関連がないことや、NPSを測る意味がないことまで示したわけではありません。

BtoB SaaSでは点数がぶれる

顧客数の少ないBtoB SaaSでは、点数の上下をそのまま変化として読まないことが前提になります。

NPSは差分を取る指標なので、回答者が少ないと1件の影響が大きく出ます。たとえば同じ20社から各1人が回答し、推奨者8人・中立者8人・批判者4人ならNPSは20です。このうち1人が推奨者から批判者に変わるだけで10になります。10ポイントの低下でも、回答が変わったのは1人だけです。これは計算例であり、顧客の評価が全体として半分になったことを意味しません。

20社が回答した場合のNPSの変化を示した図。前回は推奨者8社・中立者8社・批判者4社で、40%から20%を引いてNPSは20。1社が推奨者から批判者に変わると、推奨者7社・中立者8社・批判者5社になり、35%から25%を引いてNPSは10に半減する。動いたのは1社だけであることが色付きのマスで示されている
各社1人が答える計算例です。同じ20社のうち1人の回答が変わると、NPSは20から10に下がります

少数の回答でスコアが動いたときは、まず誰の回答が変わったか、前回と同じ人が答えたかを確認します。同じ会社でも、決裁者と日常の利用者では評価が異なる可能性があります。1人の変化を全体の傾向として扱うことも、回答が少ないという理由だけでその人の不満を見過ごすことも避けたいところです。

点数の上下と一緒に、回答者と理由を確認します

会議には、NPSに加えて各区分の人数、回答者の入れ替わり、変化の理由が分かる自由記述を持ち込みます。「NPSが下がった」で止めず、「どの顧客の何が変わったか」「追加で何を聞くか」まで整理すると、次の行動を決めやすくなります。

自由記述を日常の声と同じ場所で読む

製品の何を直すかを考えるには、点数をつけた理由が必要です。Bainが紹介する調査の基本でも、推奨度に加えて、その理由や改善できることを尋ねています。点数は「誰に聞きに行くべきか」の手がかりになりますが、何を直すべきかまでは教えてくれません。

扱い方として現実的なのは、NPSの自由記述をNPS専用の集計に閉じ込めないことです。問い合わせや商談メモと同じ受け皿に流し、同じ場で読みます。理由は2つあります。

1つは、調査結果を読む機会を増やせることです。たとえば四半期ごとの調査報告会だけで扱う運用なら、日常の声を読む会にも自由記述を持ち込めます。読む会の進め方はVOC(顧客の声)の活用方法にまとめています。

もう1つは、同じ課題が別の経路からも届いていることがあるからです。たとえば、NPSで「レポートが使いにくい」と書いた会社が、以前サポートへ似た内容を問い合わせていた場合を考えます。記録を一緒に読めば、同じ課題かどうか確かめやすくなります。

理由が分からない回答は、追加で確認します

批判者の回答では、理由欄が空欄だったり一言だけだったりすることもあります。回答者に連絡できる調査なら、CSから利用場面や困ったことを尋ねます。匿名の回答から個別の顧客を特定することはできません。

批判者に限らず、中立者や推奨者の記述にも具体的な不満があれば確認対象にします。点数は話を聞く相手を選ぶ手がかりであり、低い点数の顧客の要望を必ず先に開発するという意味ではありません。

読み終えたら、元の言葉と利用場面、追加で確認したいことを要望の記録に残します。確認する担当者も決めておけば、集計して終わるのを防げます。

よくある質問

Q

顧客が20社ほどしかありません。NPSは測るべきですか?

A

誰に追加で話を聞くかを決める目的なら、選択肢になります。顧客数だけで有用・無用は決まりません。ただし、1社から複数人が回答する場合は顧客数と回答数が異なるため、誰を対象にするかを先に決めてください。少数の回答では、スコアだけで全体の改善を判断せず、回答者ごとの理由を読む使い方が現実的です。

Q

NPSの調査はどのくらいの頻度で行うべきですか?

A

回答数だけから適切な頻度は決められません。調査の目的、顧客が改善を体験するまでの期間、回答の負担、回答後に対応できる体制を踏まえて決めます。継続して比較するなら、対象者・設問・実施タイミングなどの条件をそろえて記録してください。調査の間にも日常の問い合わせは読み、次回のNPSを待たずに対応します。

Q

業界平均と比べて自社のスコアを評価してよいですか?

A

参考程度にとどめてください。NPSは、誰に送ったか、回答率がどのくらいか、特定の取引の直後に聞いたのかといった調査の条件しだいで数字が動きます。こうした条件が開示されていない平均値と自社の数字を並べても、比較にはなりません。提唱者のReichheldらも2021年の記事で、スコアの公表時にこうした条件が開示されていないことを問題として挙げています。

まとめ

NPSの点数を上げること自体が目的になると、測り方を歪める動機が生まれます。少数の回答では1人の変化も大きく表れるため、点数の上下だけで全体の傾向は判断できません。回答者と調査条件を確認し、理由を読んでから次の行動を決めます。

製品改善に使えるのは自由記述のほうです。点数は「どの顧客に聞きに行くか」を決める材料にとどめ、集めた文章はNPS専用の集計に閉じ込めずに、日常の声と同じ場所で読みます。拾った課題から何を先に作るかは、開発する機能の優先順位を決める方法にまとめています。

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