顧客ニーズを把握するには?
「次に何を改善するか、顧客の意見を調べてほしい」と頼まれ、どこから手をつけるか迷っていませんか。顧客ニーズを把握するには、誰の何を知りたいかを決め、問い合わせやレビュー、アンケートなどから合う調べ方を選びます。
この記事でいう顧客ニーズは、「顧客が達成したいことや、解消したい困りごと」です。調査手法をすべて試す必要はありません。手元の情報で分かることと、追加で確かめることを分け、改善を検討する材料にまとめるところまでを説明します。
- 誰の、どの場面の困りごとを知りたいか決める
- 知りたいことに合わせて調べ方を選び、情報の偏りも確かめる
- 根拠と未確認点を添えて、改善候補として残す
まず、誰のどんな困りごとを知りたいか決める
「顧客のニーズを知る」だけでは、調べる対象を選べません。「商品を初めて買う人が、注文を途中でやめる理由を知りたい」のように、相手と場面を一つに絞ると、見る記録や聞く相手を選べます。
製品を購入する人と、毎日使う人が違う場合もあります。購入担当者の話から予算や導入条件は分かっても、日々の操作の困りごとまで分かるとは限りません。今回の改善で助けたい相手は誰でしょうか。調べる前に対象者を書いておきます。
英国政府のサービス設計ガイドは、利用者とそのニーズを調べる観点として、利用者が何をしようとしているか、今どう行っているか、どこで困っているかを挙げています。一般企業の調査でも、この順に問いを整理できます。
顧客から「通知を増やしてほしい」と言われたら、通知の追加は一つの改善案です。その言葉は残したうえで、何を見落として困っているのかを確かめます。背景が分からなければ、通知以外の解決方法が合うかどうかも判断できません。
知りたいことに合わせて調べ方を選ぶ
まず、社内にある問い合わせ記録、レビュー、過去のアンケートを確認します。同じことをすでに調べていないでしょうか。過去の記録で答えが分かれば、顧客に同じ質問を繰り返す必要はありません。
調査方法ごとの得意なことと限界を、次の表に整理しました。知りたいことが表の右列にある場合は、別の方法で補います。
| 調べ方 | 分かること | その情報だけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 問い合わせを読む | 連絡した顧客が困った場面、質問した内容 | 問い合わせていない顧客も同じことで困っているか |
| レビューを読む | 投稿者が評価した点、不満に感じた点 | 投稿の背景、現在の製品でも同じ状態か |
| アンケートで聞く | 同じ質問に対する回答の傾向、選択の理由 | 回答しなかった人の考え、回答の詳しい背景 |
| インタビューで聞く | 出来事の流れ、困った理由、その場の回避策 | 顧客全体でどのくらい起きているか |
| 利用記録や操作を確かめる | 操作の順序、使われている箇所、止まる場面 | その行動をした理由や気持ち |
たとえば、どの画面で質問が多いか知りたいなら、問い合わせの内容を画面ごとに確認します。ただし、その記録に理由がなければ、なぜ迷ったのかまでは分かりません。実際に迷った人に話を聞く方法が候補になります。
同じ困りごとがほかの利用者にもあるか確かめたい場合は、対象者と質問をそろえたアンケートを検討できます。ただし、選択肢に思いついた原因だけを並べると、別の理由があっても選べません。米国の調査機関Pew Research Centerも、自由回答か選択式かによって回答が変わることを説明しています。自由に書ける欄も設けると、想定外の理由を残せます。
手元の声を読む習慣はVOCの活用方法、詳しく背景を聞く質問や進行はユーザーインタビューの進め方で扱っています。今回の問いに答えられる方法を選べれば、すべての調査を一度に実施する必要はありません。
一つの情報だけで顧客全体のニーズと決めない
集まった声を読むときは、誰の声が含まれ、誰の声が含まれていないかも確かめます。問い合わせが少なくても、連絡する前に利用をやめた人がいるかもしれません。反対に、同じ人から何度も連絡が来た場合、連絡件数をそのまま困っている人数にはできません。
レビューでは、投稿日や対象製品、利用した場面を見ます。古い版の評価を、今の製品の問題として数えないようにします。アンケートの集計には、対象者、実施時期、回答数を添え、回答者の傾向を顧客全体へ広げて断定しません。
利用記録にも限界があります。ある画面で操作が止まっていても、分かりにくかったのか、必要な作業が終わったのかは記録だけでは判断できない場合があります。記録から分かった事実と、そこから考えた理由を分けることが大切です。
複数の情報を合わせるときも、件数を足すだけで判断しないでください。同じ顧客の同じ出来事が、問い合わせとアンケートの両方に残っていることがあります。元の記録が残っていなければ、重複かどうかを後から確かめられません。

根拠と未確認点を、改善候補として残す
調べ終えたら、集めた資料の一覧に加えて、何を改善したいのかを短く整理します。以下は説明用の架空の業務ツールの例で、実在する製品や顧客の記録ではありません。
| 残す項目 | 記入例 |
|---|---|
| 対象と場面 | 外出先で申請内容を確認する承認担当者 |
| 顧客の原文 | 「スマホだと添付資料をどこから開くか分かりません」 |
| 記録から分かったこと | 問い合わせで、添付資料の開き方を尋ねている |
| 困りごとの仮説 | 外出先で申請を確認するとき、資料を探す操作で迷っている可能性がある |
| 根拠 | 問い合わせの記録ID、受信日、対象画面 |
| 未確認点 | どの表示で迷ったのか、ほかの承認担当者にも起きているか |
| 次に確かめること | 本人に、迷ったときの画面と操作の順序を聞く |
表示場所が見つからないのでしょうか。それとも名称が分からないのでしょうか。理由によって改善案は変わるため、この段階で「添付ボタンを大きくする」と決める必要はありません。分からないところを残しておくと、追加の確認を具体的に頼めます。
記録を継続して管理する場合は、顧客要望の管理表テンプレートへ引き継げます。困りごとを登録しても、開発が決まったことにはなりません。管理表では「調査中」「対応決定」などの状態を分けます。
よくある質問
調査に使える時間や予算が少ない場合は、何から始めればよいですか?
対象にする業務を一つ決め、その業務に関する問い合わせや過去の回答を確認します。記録で分かったことと、まだ分からないことを書き分けると、追加で聞く相手や質問を絞れます。すべての調査方法を同時に試す必要はありません。
少数の声でも改善候補にしてよいですか?
改善候補として残せます。ただし、少数の声から顧客全体のニーズとは断定しません。業務が止まるなど影響が大きい可能性があれば、件数だけで外さず、影響の範囲と困った場面を確認します。
まとめ
顧客ニーズの把握は、誰のどの場面を知りたいか決めるところから始めます。問いに合う調べ方を選び、情報の偏りを確かめ、根拠と未確認点を改善候補に添えます。
まずは、調べたい業務を一つ選び、手元にどんな記録があるか確認してみてください。把握したニーズを今後の改善計画につなげる考え方は、プロダクトロードマップの作り方で説明しています。